はじめに
私は以前、どんな人が理想なのと聞かれると
・優しい人
・価値観が合う人
・一緒にいて落ち着く人
そんなふわっとした言葉しか出てきませんでした。
そのくせ、恋愛がうまくいかない時は「見る目がないのかな」「運が悪いのかな」と自分を責めていました。
あとになって心理学の研究を読む中で気づいたのは理想の相手があいまいなほど、恋愛もあいまいになりやすいということです。
最近の研究では自分の理想像をある程度言葉にできている人ほど恋愛の満足度が高く、関係も続きやすいと報告されています。
今日は、心理学のエビデンスをもとに理想の相手をはっきりさせるための3つの質問を、できるだけやさしい言葉でお話しします。
なぜ理想の相手を「言葉」にすると恋が変わるのか
恋愛研究では「理想のパートナー像」をどう持っているかを説明する理想基準モデルという考え方があります。
ざっくり言うと人は心の中に
・こんな性格だといいな
・こういう向き合い方をしてくれると嬉しいな
・このくらい価値観が合うと安心だな
という理想のチェックリストを持っていて実際の相手がその理想に近いほど満足度が高くなる、という考え方です。
さらに、2025年の世界規模の研究では理想のイメージと実際の相手がある程度マッチしているほど恋愛の満足度が高いことが、43か国の1万人以上のデータから確かめられています。
ここで大事なのは
・理想が「高いか低いか」ではなく
・理想が「自分の中で整理されているかどうか」
です。
ぼんやりと「優しくて年収がそこそこあって趣味が合う人」くらいで止まっていると、
・本当は何を一番大事にしたいのか
・どこまでなら違っても大丈夫なのか
が自分でも分からなくなります。
その結果
・なんとなく雰囲気で付き合ってしまう
・付き合ってから「やっぱり違った」と感じやすい
という流れが起きてしまうのです。
質問1 一緒にいるときどんな自分でいたい?
理想の相手を考える時多くの人は「相手がどんな人か」ばかりを見がちです。
・優しいか
・仕事ができるか
・頼りになるか
もちろん大事ですが最新の「自己拡張理論」という考え方ではその人と一緒にいる時の自分がどう変化するかが恋愛の幸せを左右すると言われています。
研究では自分の世界が広がるような関係ほど情熱や満足感が高まりやすいと報告されています。
そこで質問1です。
一緒にいるときどんな自分でいたい?
たとえば
・自然体でいられる自分
・よく笑う自分
・ちょっと新しいことに挑戦してみたくなる自分
・弱音も安心して出せる自分
こんなふうに「その人といる時の自分」から理想像を考えてみます。
私自身も以前は「職業」や「条件」ばかり見ていましたが、
今は
・一緒にいるとき肩の力が抜けるか
・頑張りすぎずに相談できるか
といった自分側の変化を大事な基準にするようになりました。
すると相手を選ぶ目線も「すごい人」ではなく「一緒に成長していける人」に変わっていきました。

質問2 どんな価値観が合うと安心できる?
次のポイントは価値観です。
性格が真逆でも「何を大事にしたいか」が似ているカップルは長く続きやすいと言われています。
近年の研究でも価値観や人生の優先順位が似ているほどパートナーへの満足度が高くなりやすいと報告されています。
ここで質問2です。
どんな価値観が合うと安心できる?
たとえば
・お金の使い方
例:体験に使いたいのか貯金を大事にしたいのか
・時間の使い方
例:家族との時間を最優先にしたいのか
仕事や自己成長の時間を多めに取りたいのか
・人付き合いのスタイル
例:友達とよく集まりたいのか
ふたりの時間を大事にしたいのか
・生活リズム
例:早寝早起きがいいのか
夜型でも気にしないのか
このあたりを
紙に書き出してみるのがおすすめです。
私が相談を受ける中でも、
・「優しいけれどお金の価値観が全然違ってつらい」
・「好き同士なのに仕事への向き合い方が真反対でしんどい」
という話はとても多いです。
ここで大切なのは
・全部同じ価値観の人を探す
のではなく
・絶対に外せないポイントはどこか
・違っていても話し合えれば大丈夫な所はどこか
を自分で分かっておくことです。
質問3 この人とならどんな困難を一緒に乗り越えたい?
恋愛初期はときめきやドキドキに目がいきがちですが、長く続くかどうかを決めるのは「ふたりで困難をどう乗り越えるか」です。
カップルが一緒にチャレンジをしたり新しい体験を共有すると関係の満足度が上がることが複数の研究で示されています。
さらに、ストレスや困難に「ふたりで向き合う」ダイアディック・コーピング(ストレスを乗り越えるために、他者と協力して行う対処法のこと)と呼ばれるやり方ができるカップルほど関係満足度が高く、長続きしやすいと報告されています。
ここで質問3です。
この人とならどんな困難を一緒に乗り越えたい?
たとえば
・仕事でつらい時期を支え合える相手がいい
・子育ての大変さを一緒に引き受けてくれる人がいい
・親の介護など将来の現実も話し合える人がいい
など
「いい時だけでなく大変な時も一緒にいたいか」
という目線で考えてみます。
私自身も昔は「一緒にいて楽しいかどうか」だけを見ていましたが
今は
・意見がぶつかったとき
・自分が弱っているとき
にどう向き合えるかを理想像の中に含めて考えるようになりました。
3つの質問を日常で使うミニワーク
ここまでの3つの質問を日常で使いやすくするために簡単なワークをまとめます。
紙やスマホのメモに次の3つを書いてみてください。
・質問1一緒にいるときどんな自分でいたい?
・質問2どんな価値観が合うと安心できる?
・質問3この人とならどんな困難を一緒に乗り越えたい?
その上で
・過去の恋愛や好きだった人を思い出して書く
・今気になっている人がいればその人を思い浮かべて書く
これを数日に分けて少しずつ書き足していきます。
大事なのはきれいな答えを書くことではなく
・あれ私意外とこういうところを大事にしていたんだ
・ここはまだよく分かっていないかも
と自分の本音に気づいていくことです。
さいごに
私は長い間「理想の相手」という言葉をどこか夢みたいなものとして扱っていました。
でも心理学の研究を知り自分でも3つの質問を書き出してみたことで
・自分がどんな自分でいたいのか
・どんな価値観が合うと安心なのか
・どんな困難なら一緒に乗り越えたいと思えるのか
が少しずつ見えてきました。
その結果ただ「条件が良さそうな人」ではなく「一緒にいると自分を大事にできる人」に目が向くようになりました。
理想の相手を明確にすることはわがままになることでも夢見がちになることでもありません。
・自分を知ること
・大事にしたいものを整理すること
その延長線上にあなたに合った相手との出会いが生まれていきます。
もし今「どんな人が理想か分からない」と感じていても大丈夫です。
今日の3つの質問をあなたのペースでゆっくりメモしてみてください。
その時間そのものがあなたの心を整理し未来の出会いをやさしく選びなおす第一歩になります。
参考文献
・Eastwick,P.W.etal.Aworldwidetestofthepredictivevalidityofidealpartnerpreferencematching.JournalofPersonalityandSocialPsychology,2025.
・Driebe,J.C.etal.Stabilityandchangeofindividualdifferencesinidealpartnerpreferences.JournalofResearchinPersonality,2023.
・Emery,L.F.,Hughes,E.K.,&Muise,A.Self-expansiontheory:Origins,currentevidence,andfuturehorizons.SocialandPersonalityPsychologyCompass,2025.
・Liu,J.etal.Singlessimilaritypreferencesinanidealpartner.FrontiersinPsychology,2023.
・Relvas,A.P.etal.Dyadiccopingasamediatorbetweenperceivedstressandrelationshipquality.CognitiveTherapyandResearch,2023.


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