はじめに
私は以前優しい人に好かれても心が動かない告白されても返事を引きのばしてしまうそんな時期が長く続いたことがあります。
頭ではそろそろ恋愛した方がいいよなあこの人を逃したらもう出会いがないかもと分かっているのに、心がまったく追いつかない。
あの頃の私は私の心は壊れてしまったのかな人としておかしいのかなと本気で悩んでいました。
でも今は、心理学や脳科学の研究を読む中で好きになれない時期は、心や脳がサボっているのではなく自分を守るための防衛反応だと考えるようになりました。
この記事では
・好きになれないのはなぜ起こるのか
・それはどんなメカニズムなのか
・そこから抜け出していくために、何ができるのか
を、できるだけやさしい言葉でまとめていきます。
自分はダメだと決めつける前に一度「心と脳の仕組み」の視点から、一緒に見直してみましょう。
好きになれないのは「心が壊れたから」ではない
まず最初に伝えたいのは好きになれないときめかないという状態は病気でも性格の欠陥でもない、ということです。
大人の愛着研究では不安型や回避型といった「愛着の不安定さ」がある人ほど
・感情のコントロールが難しくなる
・親密になる場面でブレーキがかかりやすい
という結果が出ています。
これは、過去の人間関係で傷ついた経験があるほど次に同じくらい近い関係になりそうになると心が「ここまで近づくと危ないかもしれない」「またあの痛みを味わうかもしれない」と判断し、感情のスイッチを弱めてしまう、というイメージです。
私は昔、自分を守るためにあえて浅い関係だけを選んでいた時期がありました。
それは
・人を好きになれない私が悪い
のではなく
好きになった時の痛みをもう経験したくない私が必死で自分を守っていたのだと、今では思います。
好きになれない病の正体は多くの場合
・感じないようにしてきた歴史
・感じるとつらくなりそうな予感
の積み重ねです。
あなたが弱いからではなく、むしろちゃんと学習してきた心の証拠でもあります。
脳から見る「ときめきが来ない状態」
次は、脳の働きという視点です。
人とつながる時、脳の中では
・オキシトシン
・ドーパミン
といった物質が出て、安心感やうれしさを作り出します。
これらは、脳の「ごほうび回路」と呼ばれる場所と深く関わっています。
ところが、強いストレスやつらい出来事が続くと
・楽しいはずの出来事に、前ほど反応できない
・人と会っても、喜びのスイッチが入りにくい
という状態が起こることが分かってきました。
研究では、うつや強いストレスを抱えた人ほど
・社会的なごほうび
・人からほめられる
・仲良く過ごす時間
などに対して、脳の反応が弱くなりやすい、という結果が出ています。
この「反応が弱くなる」状態は
・やる気が出ない
・人に会っても楽しくない
・恋愛しても心が動きにくい
と感じる土台になります。
大切なのはときめきが薄いのは心が冷たいからではなく脳が守りモードに入っていると考えることです。
私はこの研究を知った時、好きになれない自分を責める気持ちが少し和らぎました。
壊れたのではなく、休んでいるだけなら少しずつ温め直していけばいい、と感じられたからです。
好きになれない病から抜け出すための3つのステップ
ここからは、研究と実践から見えてきた好きになれない状態から回復していくための3つのステップを紹介します。
全部を一気にやる必要はありません。
できそうなものから、あなたのペースで試してみてください。
①安心できる人間関係を増やす
恋愛をいきなりがんばろうとすると心も脳もびっくりして、さらに緊張してしまいます。
そこで最初のステップは恋愛ではなく安心を感じられる人間関係を増やすことです。
最近の研究では
・愛着が安定している人ほど人からの支えを受け取りやすい
・安心できる人とのつながりが、ストレスからの回復を助ける
ことが報告されています。
安心できる人とは、例えば
・弱音を言っても、急に否定しない人
・会ったあとに、心が少し軽くなっている人
・沈黙が続いても、気まずさより安心を感じる人
のような相手です。
恋愛の相手でなくてもかまいません。
・気の合う友達
・きょうだいや親
・オンラインでつながる安心できるコミュニティ
こうした関係でも、心の安全基地は少しずつ育っていきます。
私も、恋愛で疲れ切っていた時期に友人との短いお茶時間や、気楽に話せる仲間とのチャットにどれだけ支えられたか分かりません。
恋のスイッチをいきなり入れるのではなく安心のスイッチを増やすここからで大丈夫です。
②感情を言葉にしてみる
2つ目のステップは今の気持ちに、ことばのラベルを貼ってみることです。
感情の心理学では
・がまんして感情を押さえ込むより
・言葉にして認識する方が
ストレスが下がり、人間関係の満足度も高まりやすいことが分かってきました。
これは「感情ラベリング」と呼ばれ最近の脳科学のレビューでも、感情を穏やかにする方法として注目されています。
と言っても、むずかしいことをする必要はありません。
・今日は少しつかれている
・なんとなくさびしい
・ちょっと安心している
・恋愛の話を聞くとモヤモヤする
このくらいの短い言葉でじゅうぶんです。
私も、ノートやスマホのメモにその日の感情を1行書くだけ、ということを続けてみました。
最初は何を書けばいいか分からないという感覚でしたが、続けるうちに
・自分は意外とよくがんばっている日も多い
・いつも同じところで傷ついている
といった傾向が少しずつ見えてきました。
感情を言葉にすると
・よく分からない不安のかたまり
だったものが
・さびしさ
・疲れ
・怖さ
などに分かれて、扱いやすくなっていきます。
それが、次の一歩にもつながっていきます。
③小さな「好き」の芽を育てる
3つ目のステップは雷のような一目ぼれを待つのではなく小さな好きの芽を大事にする
ことです。
心理学には「単純接触効果」という考えがあります。
人は、何度も接する人や物に対して少しずつ安心感や好意を持ちやすくなる、という現象です。
最近の研究でも、
・何度も会う
・短い時間でも関わりが続く
という経験が、相手への好意や安心感を高めることが改めて確かめられています。
ここで大切なのは
・いきなり大好きになろうとしないこと
・ドキドキよりも「少しだけ心地いい感覚」を探すこと
です。
具体的には、次のような小さなサインを大切にします。
・この人と話していると、少しだけ呼吸がラクになる
・メッセージのやりとりが、めんどうではない
・会ったあとの自分が、前より少し落ち着いている
こうした小さな「好きの芽」がある相手とすこしずつ会う機会を増やしていくことで脳は「この人と一緒にいても大丈夫そうだ」と学習し、安心と好意の回路がゆっくり育っていきます。
私自身、劇的な一目ぼれよりも最初は「いい人だな」程度だった人との方があとから深い安心感や信頼につながった経験があります。
もちろん、違和感や危険サインを無視して無理に好きになろうとする必要はありません。
大切なのは少し安心できる人との小さなつながりを積み重ねることです。

④自分を責めないことが、いちばんの近道
ここまで
・安心できる関係を増やす
・感情を言葉にする
・小さな好きの芽を育てる
という3つのステップを紹介しました。
ただ、そのどれよりも先に大切なのは好きになれない自分を責めないことだと、私は感じています。
最近の研究でも
・愛着の不安定さがある人ほど
感情のコントロールがむずかしくなる
・でも、安心できる人やセルフコンパッションを育てることで
少しずつ変化していける
という結果が出てきています。
今日からできる小さな一歩を、いくつか挙げてみます。
・恋愛のことで動けない自分をさぼりではなく「防衛モード」と呼び変えてみる
・感情が動かない日は私はよくここまでがんばってきたなと、自分に一言だけでもねぎらいをかける
・安心できる人との予定を月に1回からでもいいので入れてみる
どれも、とても小さな一歩です。
でも、こうした小さな一歩の積み重ねが心と脳のモードを、ゆっくり「守り」から「安心」へと切り替えていきます。
さいごに
私は、好きになれない時期が長く続いたことで
・自分はおかしい
・人として欠けている
と感じていた時間がありました。
けれど今振り返るとあの時期は、心が一生懸命に自分を守ろうとしてくれていた時間でもあったのだと感じます。
もし今、あなたが
・心が動かない自分にがっかりしている
・周りの恋愛話を聞くたびに、取り残された気持ちになる
としたらそれは、あなたの感情が壊れた証拠ではありません。
生き延びてきた証、でもあります。
安心できる人との時間を少しずつ増やし自分の感情に小さなラベルを貼り小さな好きの芽を見逃さないでいるうちに
心は、思ったより静かに、でも確かに動きはじめます。
恋愛は、がんばって取り戻すものではなく整った心に、あとからそっと訪れるもの。
その日が来るまで動けない自分を責めるよりここまでがんばってきた自分を、少しだけいたわってあげてください。
それが、好きになれない病から抜け出すいちばんやさしいスタートだと、私は思っています。
参考文献
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