はじめに
赤ちゃんと関わっていると、よくこんな声を聞きます。
- 「触るとあつい気がするけど、これって大丈夫?」
- 「手足が冷たいけど、寒いのかな?」
- 「何枚着せたらいいのか分からなくて、毎日迷ってしまう」
私も作業療法士として、新生児さんのお世話をしているご家族とお話しするときに「体温」と「服の枚数」の不安はほぼ必ずと言っていいほど出てくるテーマだと感じています。
新生児の体は、まだ体温を自分で上手に調節することができません。
でも、いくつかの「目安」と「考え方」を知っておくと、
- 毎日の着せ替えの迷いが減る
- 赤ちゃんも快適に過ごしやすくなる
- パパやママの不安も少し軽くなる
そんなメリットがあります。
この記事では、
- 新生児の体温調節の特徴
- 室温や湿度の目安
- 服の枚数を決めるシンプルなルール
- 体温のチェック方法
を、エビデンスと現場での経験をまぜながら、分かりやすくお話しします。
①新生児は暑さにも寒さにも弱い
まず知っておいてほしいのは、新生児は「暑さにも寒さにも弱い」ということです。
日本小児科学会のガイドラインでは、新生児の体の特徴として次の点が挙げられています。
- 体の表面積が大きく、熱が逃げやすい
- 皮下脂肪が少なく、保温が得意ではない
- 汗腺や血管の反応が未熟で、余分な熱を逃がすのも苦手
そのため、
- 少し寒いだけで体が冷えやすい
- 服を着せすぎると、体に熱がこもってしまう
ということが起こりやすいのです。
国立成育医療研究センターの報告でも、新生児期の「低体温」も「暑くなりすぎ」も、どちらも体調不良のリスクを高めることが示されています(2022)。
だからこそ、
- 「寒そうだからとにかく厚着」にも
- 「心配だからエアコン弱めで我慢」にも
ならないように、バランスをとることが大切になります。
②快適な環境の目安は室温24〜26℃・湿度50〜60%
体温調節は服だけでなく、お部屋の環境づくりもセットで考える必要があります。
厚生労働省や日本小児科学会の新生児ケアガイドラインでは、
- 室温:24〜26℃
- 湿度:50〜60%
が、新生児にとって負担が少なく、体温が安定しやすい目安とされています。
この温度帯では、
- 皮膚の温度がだいたい36.5〜37.5℃におさまりやすい
- 体が頑張って熱を作ったり、逃がしたりする負担が少ない
ことが報告されています(日本小児科学会, 2021)。
季節ごとの工夫としては、
- 冬:エアコン+加湿器で、室温と湿度の両方を調整
- 夏:冷房は26℃前後、冷気や扇風機の風が赤ちゃんに直接当たらないように配置を工夫
がポイントになります。
作業療法士としての感覚では、
- 室温設定だけでなく、「大人が半袖1枚で少し涼しいかな」くらいの環境だと、赤ちゃんにとってちょうどいい
というケースも多いと感じています。
③着せ替えの基本ルールは「大人より1枚少なく」
服の枚数で迷ったときに、覚えておきたいシンプルな目安があります。
それが、「大人より1枚少なく」が基本という考え方です。
WHO(世界保健機関)や厚生労働省の資料では、
- 赤ちゃんの体は熱をため込みやすく
- 厚着をさせすぎると、体温が上がりすぎて眠りが浅くなる
ことが示されています(Pediatrics, 2018)。
服装のイメージ例
季節ごとの、分かりやすい目安を挙げてみます。
春・秋(室温24〜26℃くらい)
- 大人:長袖Tシャツ1枚
- 赤ちゃん:肌着+長袖カバーオール
夏(室温26℃前後、エアコン使用)
- 大人:半袖Tシャツ
- 赤ちゃん:薄手の短肌着+コンビ肌着、または薄手のロンパース1枚
冬(室温24℃前後に調整している場合)
- 大人:長袖+薄手のカーディガン
- 赤ちゃん:肌着+カバーオール+おくるみやスリーパーで微調整
大事なのは、「最初から完璧な正解の枚数を当てること」ではなく、汗や背中のあたたかさを見ながらこまめに調整することです。
④体温チェックは「背中」と「お腹」で
赤ちゃんの体温が気になったとき、つい手足の冷たさで判断してしまいがちですが、手足は判断材料としては不向きです。
新生児の手足は、血流がまだ安定していないため、
- 寒くなくても、冷たく感じることがある
- 泣いたあとや興奮しているときは、逆に少し熱く感じる
といったことがよくあります。
チェックする場所
おすすめのチェックポイントは、次の2か所です。
- 背中(肩甲骨の間)
- お腹(おへそのあたり)
ここを触ってみて、
- あたたかく、少ししっとりしている → ちょうどいい
- 汗でべたっとしている → 少し暑いかも。服を1枚減らす、室温を調整する
- ひんやりしている、冷たく感じる → 1枚足す、もしくはおくるみで軽く包む
というふうに、調整していきます。
体温計で測る場合は、
- 36.0〜37.5℃くらいが目安の範囲です。
作業療法士として関わる中でも、「背中とお腹でチェック」+「服を増やすか減らす」というシンプルなセットを覚えていただくと、 パパ・ママの不安がぐっと減る印象があります。
⑤よくある不安を、少しだけ言葉で整理してみる
新生児の体温調節について、よく聞かれる質問をいくつか挙げてみます。
Q1. 手足が冷たいのは、寒いから?
必ずしもそうとは限りません。
手足は血流が不安定な場所なので、背中とお腹があたたかければ大きな心配はいりません。
Q2. 泣いて顔が赤いのは、暑いから?
大きな声で泣くと、一時的に顔が赤くなることはよくあります。
そのときも、やはり背中とお腹をさわってみて判断するのが安心です。
Q3. 「冷やしすぎ」「温めすぎ」が怖くて、いつも厚着にしてしまう…
その気持ちも、とてもよく分かります。
ただ、研究では「少し涼しめ」くらいの方が赤ちゃんの眠りが安定しやすいとも言われています(Pediatrics, 2018)。
大事なのは、
- 服の数をがっちり決めて守ることではなく
- 赤ちゃんの様子を見ながら、増やしたり減らしたりできる柔らかさです。

おくるみなどで足元などをくるんであげると安心してくれます。
私自身も現場で、
- 最初は「着せすぎかな?」というくらいしっかり着せていたご家族が
- 背中や汗を見ながら、少しずつ「この子のちょうどいい」をつかんでいく
そんな姿を何度も見てきました。
正解を一発で当てるより、一緒に探していければそれで十分です。
さいごに
ここまでのポイントを、あらためて整理します。
- 新生児は、暑さにも寒さにも弱いデリケートな時期
- 環境の目安は、室温24〜26℃・湿度50〜60%
- 服装は、「大人より1枚少なく」が基本
- 体温チェックは、背中とお腹で確認
- 服の枚数は、赤ちゃんの様子を見ながら増減してOK
赤ちゃんの体温管理は、「いつもこれが正解」というものではありません。
だからこそ、
- 触ってみる
- 服を調整してみる
- それでも不安なら、助産師さんや小児科に相談してみる
という、小さな試行錯誤の積み重ねがいちばん大事だと感じています。
そして忘れてほしくないのは、
- 迷いながらも、「この子が快適に過ごせるように」と考えていること自体が、すでに大きな愛情だということ
です。
着せすぎないことよりも、「あれ、暑そうかな」「少し寒いかな」と気づいて調整してあげられることが、新生児にとって一番やさしい温度管理です。
どうか、赤ちゃんの背中といっしょに、頑張っている自分の心もそっとなでてあげてください。
参考文献
- 日本小児科学会(2021)新生児体温管理に関するガイドライン
- 厚生労働省(2021)新生児ケア・授乳支援マニュアル
- 国立成育医療研究センター(2022)新生児の体温調節に関する報告
- World Health Organization (2020). Thermal Protection of the Newborn
- Pediatrics (2018). Infant Sleep and Thermal Comfort Study


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