はじめに
赤ちゃんをお迎えしたばかりの時期、うれしさと同じくらい、こんな不安も出てきませんか。
- どこまで気をつけたらいいんだろう
- これって危ない?それとも大丈夫?
- 事故を起こしたらどうしよう…
私も医療・リハビリに関わる中で、「とにかく安全に過ごさせてあげたいけど、何から気をつければいいのか分からない」という声を、本当にたくさん聞いてきました。
消費者庁と日本小児科学会の調査では、家庭内の事故の約7割が、生後6ヶ月以内に起きていると報告されています。
まだ寝ているだけ・動けないと思える時期にも、実は見落としがちなリスクがいくつもある、ということです。
ただし、必要以上に怖がる必要はありません。
大事なのは、
- どこに事故が起きやすいかを知ること
- 「やっておくべき基本」をおさえておくこと
この2つです。
この記事では、エビデンスをもとに、
- 新生児期に特に気をつけたい安全ポイント
- 今日からできる環境づくりのコツ
を、できるだけやさしい言葉で整理してお伝えします。
新生児期に事故が多い理由を知っておく
最初に、なぜ「生後6ヶ月以内」に事故が集中しやすいのかをシンプルに押さえておきましょう。
新生児〜生後数ヶ月の赤ちゃんは、
- 首や体を自分で支えられない
- 危険を察知して避けることができない
- 泣く・動く・反射的なキックで、思わぬ方向に転がる
という状態です。
一方で、大人側は
- 「まだ寝返りしないから大丈夫」と油断しやすい
- いつもと同じ場所に物を置きっぱなしにしてしまう
- 一瞬だけ…と目を離してしまう
こうした「ちょっとしたスキ」が、
転落・窒息・やけど・溺水につながりやすくなります。
だからこそ、新生児の安全対策は
- 赤ちゃん自身に「気をつけてもらう」のではなく
- 大人が先に環境を整えておくことがすべて
と言ってもいいくらいです。
寝かせ方で守れる命 うつ伏せ寝はNG
新生児の安全で、いちばん大きなポイントが「寝かせ方」です。
日本小児科学会のガイドラインでは、
乳幼児突然死症候群(SIDS)の大きな要因のひとつが「うつ伏せ寝」であると示されています(2023)。

私の娘がうつ伏せで寝ている姿です(当時出生4ヶ月半)。
※安全には充分留意をして撮影をしております。
(作業療法士としてリスク管理の観点でうつ伏せ評価をすることもあります)
生後6ヶ月未満の赤ちゃんは、
- 首がまだしっかりしていない
- 顔が布団や枕に埋もれても、自分で体勢を変えられない
という状態です。
そのため、うつ伏せや横向きで寝かせると、
- 口や鼻がふとんに塞がれやすい
- 空気の流れが悪くなり、呼吸がしにくくなる
といったリスクが高くなります。
安全な寝かせ方の基本
①仰向けで寝かせる
・生後半年までは、基本は仰向け一択と考えてOKです。
②顔まわりに何も置かない
・ふかふかの枕・タオル・ぬいぐるみ・授乳クッションなどは、赤ちゃんの口や鼻をふさぐ原因になります。
・ベビーベッドや布団の中は、できるだけシンプルに。
③やわらかすぎる寝具は避ける
・沈み込むマットレスや分厚い掛け布団も、窒息のリスクになります。
・適度な硬さのマット+軽くて薄めの掛け物が安心です。
厚生労働省の調査では、仰向け寝を徹底した家庭では、SIDSの発生率が約5分の1に減少したという報告もあります。
「どう寝かせるか」を整えるだけで守れる命がある
まずはここを、一番の土台として押さえておいてください。
高さと転落のリスク まだ動けないからこそ注意
「まだ寝返りしないし、転がらないから大丈夫」そう思いやすい時期こそ、実は要注意です。
国立成育医療研究センターの報告では、転落事故の約3割が、寝返り前の月齢で起きているとされています(2020)。
これは、
- 手足をバタバタさせた反動で移動してしまう
- 大人が「ちょっとだけ」と目を離したすきにずり落ちる
といった、「予想していない動き」が原因になることが多いからです。
具体的な対策
①おむつ替えはできるだけ床で
・ソファ・ベッド・テーブルの上は、たとえ一瞬でも転落リスクがあります。
・おむつ替えシートやバスタオルを床に敷いて行うのが安全です。
②ベビーベッドの柵は必ず上げる
・赤ちゃんを置いたまま、少しでも手を離すときは、
・柵がしっかり上がっているか毎回確認しましょう。
③ソファや大人用ベッドに「置きっぱなし」にしない
・高さ30cmでも、頭から落ちれば頭部損傷のリスクがあります。
・「すぐ戻るから」は、事故が起きた家庭でもよく聞かれる言葉です。
大人が「ここなら安全」と思っている場所ほど、一度「もしここから落ちたら?」とイメージしてみることが、事故を減らす第一歩になります。

私の娘と息子です(当時娘1歳半、息子2ヶ月)。
※安全には充分留意をして撮影をしております。
ベッド上では、安全管理が重要です。
作業療法士としてどんなリスクがあるのか評価する際はベッド上に載せてリスク喚起することもありました。
熱と水まわりの見落としがちな危険
新生児期に多いのが、やけどと溺水(おぼれ)です。
赤ちゃんの皮膚は、大人の約半分ほどの厚さしかなく、43℃のお湯でも数秒で低温やけどを起こしうると日本皮膚科学会のガイドラインで示されています(2021)。
熱に関する注意点
①沐浴のお湯は温度計でチェック
感覚だけに頼らず、38〜40℃を目安に。
やけど防止のためにも「熱め」は避けましょう。
②暖房器具を近づけすぎない
電気ストーブ・床暖房・ホットカーペット・電気毛布などは、長時間触れていると低温やけどの原因になります。
赤ちゃんの手足が直接触れない距離をとることが大切です。
③加湿器の蒸気にも注意
スチーム式加湿器の蒸気口に手が届く位置はNG。
ベビーベッドのすぐ横などは置かないようにしましょう。
水まわりに関する注意点
厚生労働省のデータでは、わずか5cmの水深でも、乳幼児は溺れてしまうケースが報告されています。
- 浴槽にお湯を溜めたままにしない
- ベビーバス使用中は「ながら作業」をしない
- 洗面器・バケツ・足湯用のたらいなど、
水が入った容器を赤ちゃんの手が届くところに置かない
「ちょっと電話に出るだけ」「玄関に荷物を取りに行くだけ」この数十秒が、命にかかわる時間になることがあります。
水がある場所では、赤ちゃんから目を離さないことこれが、いちばんシンプルで確実な対策です。
日常で続けやすい「安全チェック」の習慣づくり
完璧な安全対策を最初から全部やろうとすると、親の方が苦しくなってしまいます。
おすすめなのは、
- 家の中を「ゾーン」で分けて
- 毎日サッと見直す癖をつけること
です。
たとえば、次のような3つの視点で、ざっくり確認してみてください。
①寝る場所のチェック
- 仰向けで寝ているか
- 顔のまわりに布・タオル・おもちゃがないか
- 寝具がふかふかすぎないか
②高さ・転落のチェック
- 赤ちゃんを置く場所は、基本「床」になっているか
- ベビーベッドの柵は必ず上がっているか
- ソファやベッドに「一人で寝かせて放置」が習慣になっていないか
③熱・水まわりのチェック
- 暖房器具や加湿器との距離は十分か
- 浴槽にお湯を溜めっぱなしにしていないか
- 洗面器やバケツに水が残っていないか
一度に全部完璧にする必要はありません。「気づいたときに一つずつ整えていく」くらいで十分です。
それでも、何も知らずに過ごすより、事故のリスクは確実に下がります。
さいごに
新生児の安全対策というと、「ちゃんとしなきゃ」「失敗できない」と親側のプレッシャーがとても大きくなりがちです。
でも本当は、
- 危険のポイントを知っておくこと
- できる範囲で環境を整え続けること
この2つができていれば、それだけで素晴らしいと思っています。
赤ちゃんは、まだ自分で身を守ることができません。
だからこそ、
- 仰向けで寝かせる
- 高さのある場所に置きっぱなしにしない
- 熱と水まわりでは絶対に目を離さない
といった「予防の環境」を先につくることが、いちばん大きな安全対策になります。
そして、忘れないでほしいのは、「事故を起こしたくない」と何度も確認しているあなたの気持ちそのものが、すでに赤ちゃんを守る力になっている
ということです。
完璧な親でなくて大丈夫です。
「危ないかも?」と立ち止まって考えられるその感性こそが、新生児期を一緒に乗り越える、最大の味方です。
参考文献
- 日本小児科学会(2023)乳幼児突然死症候群(SIDS)予防のための提言
- 厚生労働省(2022)家庭内事故防止ハンドブック
- 消費者庁(2021)乳幼児の事故実態調査報告書
- 国立成育医療研究センター(2020)家庭内転落事故に関する研究
- 日本皮膚科学会(2021)乳幼児の低温やけど防止ガイドライン
- World Health Organization (2019). Child Injury Prevention Guidelines


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