はじめに
赤ちゃんが
・くしゃっと小さなくしゃみをしたとき
・鼻がグズグズ言っているとき
「風邪かな?」「病院へ行ったほうがいい?」と、一気に心配がふくらみますよね。
とくに新生児期は、まだ体も小さくて、「免疫がゼロなんじゃないか」と感じてしまうこともあると思います。
でも、医学的には新生児の免疫はゼロではなく、すでにお母さんからもらった“スタートセット”を持って生まれてきていることが分かっています。
そのうえで、毎日の生活のなかで
- 体に無理のない形で守ってあげること
- 自然な免疫の働きをサポートしてあげること
が、とても大切になってきます。
この記事では、
- 新生児の免疫がどんな状態なのか
- 薬に頼りすぎない「自然な免疫ケア」のポイント
- 親ができる「環境づくり」と「心の整え方」
を、エビデンスに基づきながら、やさしい言葉で整理してお話しします。
※心配な症状(高熱・呼吸が苦しそう・ミルクが飲めないなど)があるときは、自己判断せず、小児科や産院に相談することを前提に読んでいただければと思います。
新生児の免疫は「ゼロ」からのスタートではない
赤ちゃんは、お腹の中にいるあいだに、お母さんの体から
- 抗体(IgGなど)
- 免疫の記憶
を少しずつ受け取っています。
生まれてすぐは、自分でしっかり戦えるわけではありませんが、
- お母さんからもらった免疫
- 生まれてからの授乳や生活環境
によって、少しずつ自分の免疫の土台を育てている時期 です。
だからこそ、「風邪を完全にゼロにする」よりも「かかっても重くならないよう、毎日のケアで支える」という感覚を持っておくと、親側の気持ちも少しラクになります。
ここからは、そのためにできる自然な免疫ケアを5つご紹介します。
授乳は赤ちゃんの初めての免疫ケア
まず、いちばん身近な免疫ケアが 授乳 です。
国立成育医療研究センターとWHOの報告では、
- 母乳には
- 免疫グロブリンA(IgA)
- ラクトフェリン
- さまざまな抗菌・抗ウイルス成分
- 免疫グロブリンA(IgA)
が豊富に含まれていて、細菌やウイルスから体を守るバリアとして働く ことが分かっています。
とくに生後3ヶ月ごろまでは、母乳を中心に与えた赤ちゃんは、呼吸器感染症の発症率が約4割ほど低かった というデータもあります。
とはいえ、
- 母乳が出にくい
- 完全母乳は難しい
- 仕事や体調との兼ね合いがある
といった事情もありますよね。
その場合は、
- できる範囲で母乳や搾乳を取り入れる
- ミルクと組み合わせた「混合授乳」にする
など、親の心と体がつぶれない形で続けることのほうが大事 です。
「完全母乳じゃないと免疫が弱くなる」というのは、プレッシャーになりすぎる言葉。
赤ちゃんにとって一番の免疫ケアは、安心して抱っこされ、落ち着いて授乳できる環境 です。
室内環境をウイルスが嫌う状態に整える
赤ちゃんの鼻や喉の粘膜はとても薄くてデリケート。
乾燥すると、そこからウイルスが入り込みやすくなります。
日本小児科学会のガイドラインでは、
- 室温:およそ22〜26℃
- 湿度:50〜60%
が、乳児にとって最も安定しやすい環境とされています。
できることの例
- 加湿器や濡れタオルで湿度を保つ
- エアコンや暖房の風が直接赤ちゃんに当たらないようにする
- 1日に2〜3回、数分でいいので換気をする
環境感染学会の報告では、短時間の換気を数回行うだけでも、室内のウイルス量は大きく減ると言われています。
難しいことをしようとするより、
- 「乾燥しすぎない」
- 「空気を入れ替える」
この2つの習慣を大事にしてみてください。
手洗いと鼻ケアで家庭内感染を防ぐ
赤ちゃんの風邪の多くは、実は 家族からうつったもの です。
厚生労働省の調査でも、乳児の風邪の約8割が家庭内感染というデータがあります。
家族でできる風邪バリア
- 外出から帰ったら、家族全員が30秒ほどの手洗い
- できる人は、あわせてうがいも
- 風邪気味の家族は、赤ちゃんに近づくときだけマスクを活用
新生児はマスクをつけられない分、まわりの大人が「守る壁」になるイメージ です。
赤ちゃんの鼻ケア
鼻が詰まっていると、
- うまくミルクが飲めない
- 呼吸がしにくくて寝つきが悪くなる
など、体力の消耗につながります。
そのときは、
- 電動の鼻吸い器
- 生理食塩水のスプレー
などを使って、呼吸をしやすくしてあげることも立派な免疫サポート です。
「苦しそう」「呼吸音がゼロゼロしている」と感じるときは、迷わず小児科や産院に相談してください。
質のよい睡眠で自然免疫をサポート
睡眠は、赤ちゃんの免疫を支える大事な時間です。
成育医療研究センターの研究では、
- 睡眠時間が短い乳児ほど
- 免疫細胞(NK細胞など)の働きが下がりやすい
という傾向が示されています。
もちろん、新生児期は
- 授乳
- おむつ替え
で細切れ睡眠になるのが普通です。
「長く寝かせる」ことよりも、「眠りやすいリズムをつくる」こと を意識してみてください。
リズムづくりのコツ
- 日中はカーテンを開けて、明るい部屋で過ごす
- 夜は照明を落として、静かなトーンで関わる
- 寝る前のルーティン(着替え → 授乳 → 抱っこ → ねんね)をだいたい同じ順番にする
こうした小さな積み重ねが、体内時計を育て、免疫のリズムも整えていく土台 になります。

親の安心が、赤ちゃんの免疫を支える
最後に少し意外に思えるかもしれませんが、親のストレス状態は、赤ちゃんの免疫にも影響する ことが分かっています。
アメリカ小児科学会の報告では、
- 親のストレスが高い家庭では
- 赤ちゃんの唾液中の免疫物質(IgA)が約20%低下していた
というデータがあります。
これは、親を責めるための話ではなく、「親が少しでもホッとできるようにすることも赤ちゃんの免疫ケアの一部ですよ」というメッセージです。
親のためのセルフケアの例
- 1日に数回だけでも、深呼吸をゆっくりする時間をつくる
- パートナーや家族に「ここだけ手伝って」と具体的に頼む
- 完璧な育児ではなく「今日はここまでできた」でよしとする
赤ちゃんは、親の表情と声のトーンから、「安心していいのかどうか」を感じ取っています。
親が少しだけ肩の力を抜けるとき、その安心感は、赤ちゃんの体にもやさしく伝わっていきます。
さいごに
新生児の風邪対策は、特別なサプリや強い薬で「免疫を上げる」ことではありません。
むしろ、
- 授乳で免疫成分を届ける
- 室温・湿度を整えて、乾燥から守る
- 手洗い・鼻ケアで家庭内感染を防ぐ
- 睡眠リズムを整えて、自然免疫を支える
- 親自身がホッとできる時間を持つ
こうした 小さな生活習慣の積み重ね が、赤ちゃんの体を静かに、でも確実に守ってくれます。
「風邪をひかせてはいけない」と思うほど、親の心は追い込まれやすくなります。
- 風邪をまったくひかないこと
よりも - かかったとしても、無理なく乗り越えられる土台をつくること
を目標にしてみてください。
焦らず、やさしく、一歩ずつ。
そのペースで関わっているあなたの姿こそが、赤ちゃんにとって何より心強い“免疫ケア”になっています。
参考文献
- 日本小児科学会(2022)乳児の感染予防と生活環境ガイドライン
- 国立成育医療研究センター(2021)乳児期の自然免疫発達と環境因子
- 厚生労働省(2020)家庭内感染予防ハンドブック
- 環境感染学会(2021)空気感染対策に関する推奨
- World Health Organization (2018). Infant Feeding and Immunity
- American Academy of Pediatrics (2020). Parental Stress and Infant Immune Function


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