結婚と同時にやっておきたいライフプランのざっくり試算

火曜日(命を迎える準備)

はじめに

私はこれまで、家族や友人、仕事の中で「結婚したけど、お金のことはなんとなくで来てしまった」「数字を見るのが苦手で、将来のお金を考えると不安になる」という声をたくさん聞いてきました。

正直に言うと、私自身も昔は「とりあえず今が回っていればいいかな」と、結婚や将来のお金をふんわりしか考えていなかった時期があります。

でも、家計やライフプランに関する研究を知るうちに結婚のタイミングで「ざっくりでもライフプランを立てておく」ことが、その後の安心感を大きく左右すると強く感じるようになりました。

この記事では細かい専門用語はできるだけ使わず、小学生にもイメージできるレベルで、お金の話をやさしく分解していきます。完璧な計画は必要ありません。
まずは「ざっくり」の一歩を一緒に整理してみましょう。

結婚は「愛」と「お金」のチームプレー

日本FP協会の2023年の調査では「お金について不安がある」と答えた人は約8割にのぼり、特に20〜30代では結婚や子ども、老後のお金への心配が強いことが報告されています。(日本FP協会)

また、金融行動に関する全国調査では具体的なライフプランや老後資金の計画を立てていない世帯ほど、お金の不安が強いという傾向も示されています。(SonyLife)

私はこのデータを見たとき「不安が大きいからこそ、数字から目をそらしてしまう人が多いんだろうな」と、過去の自分も含めて、とても納得しました。

ここからは結婚のタイミングで押さえておきたい「ざっくり試算」の3つのポイントを、順番に見ていきます。

・毎月の生活費
・これから10年間のライフイベント
・老後のお金のざっくりイメージ

まずは「今かかっている生活費」をざっくり知る

最初の一歩は、かっこいい投資計画ではありません。
いちばん大事なのは「ふたりの生活に、毎月いくらかかっているか」を知ることです。

総務省の家計調査では、2人以上世帯の1か月の消費支出は平均およそ30万円と報告されています。(総務省統計局)
年齢が高めの世帯も含まれますが、「日本の一般的な生活費はこのくらい」という目安にはなります。

ただし、重要なのは平均値ではなく、あなたたちふたりの数字です。

例えば、こんな感じでざっくり書き出してみます。

・家賃や住宅ローン
・食費(外食やコンビニもふくむ)
・光熱費(電気ガス水道)
・通信費(スマホインターネット)
・日用品や衣類
・娯楽や交際費

ここに「毎月だいたいこれくらい」とペンで数字を書き込むだけで、ふたりの生活費の「土台」が見えてきます。

私はこれを初めて紙に書き出したとき「なんとなくお金が消えている」感覚が「何にいくら使っているのか、ちゃんと見えている」感覚に変わって、不安が少し小さくなりました。

生活費の見える化は、節約のためではなく「安心して結婚生活を続けるための土台づくり」そう考えると、少し取り組みやすくなります。

結婚から10年くらいまでの「ライフイベント」を並べる

次に考えたいのが、これから先に起こりそうな「大きめのお金イベント」です。

ライフプランの研究では、将来の支出をざっくりでも書き出している夫婦ほど、家計への不安が小さく、話し合いの満足度が高いという結果が報告されています。(SonyLife)

たとえば、結婚から10年くらいまでに起こりそうなことをざっくり書いてみます。

・引っ越し新居の家具家電
・結婚式やフォトウェディング
・車の購入や買い替え
・妊娠出産育児用品
・子どもがいる場合の保育料
・大きめの旅行や留学転職のタイミングなど

結婚関連の実態調査では挙式披露宴など結婚に関わる費用の平均は300万円前後というデータもあります。(京葉銀行)
もちろん「うちは式をしない」「フォトだけ」など、選び方によって金額は大きく変わります。

ここで大事なのは、正確な数字ではなく

・どんなイベントがありそうか
・そのときにだいたいどのくらいのお金が動きそうか

を、ふたりで「見える形」にしておくことです。

例えば、

・引っ越しと家具家電にだいたい100万円くらい
・妊娠出産育児のはじめの準備で70万円くらいまで
・車を買うなら150万円前後を上限にしよう

というように、ざっくりの上限を決めておくと、あとから話し合いやすくなります。

私はライフイベントを書き出したとき「10年でこんなに色々起こるんだ」と少しびっくりしましたが、
同時に「だからこそ、いまから少しずつ準備しておけばいいんだ」と気持ちが落ち着いたのをよく覚えています。

老後のお金を「こわい話」ではなく「長距離マラソン」として見る

最後は、老後のお金のざっくりイメージです。

老後というと「まだ先の話だから、考えたくない」と感じる人も多いと思います。

ですが、家計調査と金融機関の試算をもとにしたデータでは65歳以上の夫婦のみ世帯の1か月の生活費は約28〜30万円、年金収入だけでは毎月数万円ほど不足するケースもあるとされています。(MUFG銀行)

この不足分を20〜30年でならして考えると、ざっくり1000万〜2000万円くらいを、自分たちで用意していくイメージになると説明されることが多いです。(MUFG銀行)

ここで大事なのは

・一気に用意しなきゃではなく
・長い時間を使って「少しずつ積み立てていく」

という発想に切り替えることです。

例えば、2025年のマネー記事では「月2万円を30年間、年5%で積み立てた場合、元本720万円に対して運用益が約945万円となり、合計約1665万円になる」というシミュレーションが紹介されています。(マネーキャリア)

もちろん、実際の運用はリスクもあり、必ずこの通りになるわけではありません。
それでも

・少額でも長く続ければ、大きな差になる
・若いうちから始めるほど、老後の不安を減らせる

という感覚を持っておくことが、大きな安心につながります。

私はこの「長距離マラソン」のイメージを知ってから老後のお金は、こわい一発勝負ではなく「毎月ちょっとずつ、未来の自分にプレゼントを送ること」なんだと感じるようになりました。

ふたりで「お金の地図」を共有しておく意味

2025年の夫婦研究ではお金の計画に対する「認識のズレ」が大きいほど、結婚満足度が低くなるという結果も出ています。(IDEAS/RePEc)

つまり「ちゃんと計画しているつもり」の人と「全然聞いていない」と感じている人が同じ夫婦の中にいると、あとから不満になりやすいということです。

ここから分かるのは

・完璧なライフプランを作ることより
・ざっくりでいいから、同じ「お金の地図」をふたりで共有しておくこと

のほうが、ずっと大事だということです。

例えば、こんな会話からで十分です。

・今の生活費、だいたいこれくらいで合ってる?
・この10年で、どんなイベントがありそうかな?
・老後のお金は、月2万円くらいから積立を始めてみる?

私は、お金の話をするときに「責めるための話し合い」ではなく「これからどう生きていきたいかを、一緒に考える時間」だと意識するようにしています。

そうすると、数字の話なのに、少しあたたかい時間になることが多いです。

さいごに

ここまで、結婚と同時にやっておきたいライフプランのざっくり試算として

・毎月の生活費を見える化する
・10年くらいのライフイベントを並べてみる
・老後のお金を長距離マラソンとしてイメージする

という3つのポイントをお話ししました。

結婚は、愛情だけでなく「ふたりのお金の使い方」を一緒に選んでいくプロジェクトです。
将来が不安だからこそ、見ないふりをしたくなる気持ちもよく分かります。

でも、ざっくりでいいので数字を書き出してみると「なんとなくこわい未来」から「一緒に準備できる未来」に、少しずつ変わっていきます。

私はこれからも「専門用語だらけの難しいお金の話」ではなく小学生にもイメージできるくらいの言葉で、でも中身はエビデンスに基づいた情報をお届けしていきたいと思っています。

結婚を考えているあなたもすでに結婚しているあなたも今日少しだけ、ふたりのお金の話をしてみませんか。

それがきっと、将来の自分たちへの、いちばんやさしいプレゼントになります。

参考文献

・総務省統計局家計調査年報2人以上の世帯の家計(2024)(総務省統計局)
・日本FP協会生活とお金に関する調査2023(日本FP協会)
・金融広報中央委員会家計の金融行動に関する世論調査(2024)(SonyLife)
・リクルートブライダル総研ゼクシィ結婚トレンド調査2023(京葉銀行)
・三菱UFJ信託銀行退職後のお金と家計に関するコラム(家計調査をもとにした老後資金試算)(MUFG銀行)
・Jang,H.etal.FinancialManagementBehaviorsandFinancialSatisfactionamongMidlifeCouples(2025)(SpringerLink)
・Li,R.etal.FinancialPlanningDiscrepancyinCoupleRelationshipsandMaritalSatisfaction(2025)(IDEAS/RePEc)

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