はじめに
作業療法士として働いていると、リハビリの場面や相談の中で
- 「仕事も続けたいけど、いつ子どもを産むのがいいのか分からない」
- 「年齢のことを考えると焦る。でもお金のことを考えると不安」
という声をよく聞きました。
私自身も、「今このタイミングで子どもを迎えたら、働き方はどう変わるだろう」「体のこと、年齢のことをどこまで考えておいたらいいんだろう」と何度も頭の中でシミュレーションしてきました。
その中で感じたのは、子どもを迎える時期は、「気持ちだけ」でも「お金だけ」でも決められないだからこそ、情報と気持ちの両方をテーブルに出して話すことが大事ということです。
この記事では、できるだけむずかしい言葉を使わずに
- 妊娠のしやすさと年齢の関係
- お金や仕事の見通しをどう一緒に考えるか
- 子どもを迎えるかどうか、その時期を夫婦で話すコツ
を、研究データと私自身の視点をまぜながらお話しします。
子どもを迎えるタイミングで迷うのはあたりまえ
まず、大前提としてお伝えしたいのは「子どもをいつ迎えるか」で迷うのは、ごくふつうのことだということです。
国の調査によると、日本で初めてのお子さんを産むお母さんの平均年齢は、今はだいたい31歳くらいです。
30年前と比べると、ゆっくりと高くなっていて
- 勉強や仕事をがんばる期間が長くなった
- 正社員かパートかなど、働き方の選択肢が増えた
- 共働き夫婦が増えた
といった社会の変化も影響していると考えられています。
一方で、国立社会保障・人口問題研究所の調査では、「本当はもっと子どもがほしいけれど、持てていない」と答える夫婦も多く、その理由の1番に「子育てや教育にお金がかかりすぎる」が挙げられています。
つまり今の日本では
- 年齢
- 仕事
- お金
- 体や心の状態
いろいろな要素が重なって、タイミングを決めにくくなっているのが現実です。
迷っているからダメなのではなく、考えることが多い時代だからこそ迷いやすい。
ここをまず、自分にもパートナーにも優しく認めてあげてほしいなと思います。
年齢と妊娠の確率を「ざっくり」知っておく
次に、少しだけ医学的なお話をします。
日本産科婦人科学会などの資料では、妊娠のしやすさは年齢とともに少しずつ下がっていき、特に35歳をすぎると低下のカーブが大きくなることが示されています。
ざっくりイメージとしては
- 20代後半〜30代前半くらいまでは、1か月のうちに妊娠する確率はまだ比較的高い
- 30代後半になると、卵子の数や質がゆっくり減っていき、妊娠までに時間がかかりやすくなる
- 40代になると、妊娠する力も、妊娠を続ける力も下がりやすくなる
といった流れです。
ここで大事なのは
「〇歳だからもう無理」と決めつけることではなく
「年齢によって妊娠しやすさが変わる」という事実を、落ち着いて知っておくこと
です。
私の嫁は41歳で初めて子どもを生みました。
作業療法士として、からだの機能の変化を長く見てきましたが正しい情報を知ることは、焦りを生むためではなく「今できる選択の幅」を知るためだと感じています。
もし、年齢や体の状態が気になるときは
- 早めに婦人科で相談する
- パートナーと一緒に、検査や説明を受ける
など、2人で情報を取りに行くことも、とても大切な一歩になります。

お金と働き方の流れを2人で見える化する
子どもを迎える時期を考えるとき、次に大きなテーマになるのがお金と仕事です。
調査では、経済的な不安が「子どもを持つことにためらいがある理由」として最も多く挙げられていることが分かっています。
ただ、家計の研究を見ていると
- 年収の多さよりも
- 出産後の収入と支出の流れを、夫婦でどれだけ具体的に話せているか
のほうが、安心感に強く関係していると報告されています。
そこでおすすめなのが、「流れ」で考えることです。
例えば、こんなふうに紙に書き出してみます。
- 妊娠が分かった時期
- 産休に入るタイミング
- 育休をどのくらい取るか
- 保育園に預け始める時期
- フルタイムに戻すか、パートにするか
それぞれの時期ごとに
- 手取り収入はいくらくらいになりそうか
- 家賃やローン、生活費はいくらか
- もし足りないとしたら、どこでカバーできそうか
を、ざっくりでいいので書き込んでいきます。
ポイントは「完璧な数字」を出そうとしないこと。
まずは、収入と支出の山と谷の形を一緒に眺めてみることです。
作業療法の世界でも、先の見通しが分かるだけで不安がぐっと減る、ということがよくあります。
お金も同じで、「知らないから怖い」を「だいたい分かっているから対策できそう」に変えることが、とても大事なステップです。
「子どもを持つかどうか」も含めて価値観を話す
最近の調査や白書では、
- 子どもを持つ
- 子どもを持たない
- 何人持つか
など、家族の形を自分たちで選びたいという声が少しずつ増えていることが報告されています。
大切なのは
「子どもを持つ人生」だけを正解にしないこと
です。
2人で話すときのテーマとしては、例えばこんなものがあります。
- 自分にとって「家族」とはどんな存在か
- 子どもがいる生活と、いない生活、それぞれにどんなイメージを持っているか
- 仕事・趣味・健康・家族、どれをどんなバランスで大事にしたいか
ここで「どちらが正しいか」を決める必要はありません。
お互いの考えを知ること自体が、すでに大事な一歩です。
作業療法士として、人生の転機にいる人たちと関わってきて感じるのは価値観を言葉にできる人ほど、変化の中でもぶれにくいということです。
子どもの有無に関係なく
- どんな生き方をしたいのか
- どんな毎日なら「自分らしい」と感じられるのか
を一緒に探っていくことが、ライフプランづくりの土台になります。
夫婦で話し合うときの3つのステップ
ここからは、具体的な話し合いのコツを3つにまとめます。
① まずは情報を共有する時間をつくる
- 年齢と妊娠のしやすさ
- お金の流れ
- 仕事の制度(育休、時短勤務など)
などを、一緒に調べてみます。
そのうえで、「私はこう感じた」「ここが不安だった」とお互いの感想を交換します。
② 次に、気持ちや理想をゆっくり話す
- 本当は何人くらい子どもがほしいか
- どんなペースで働き続けたいか
- もし計画通りにいかなかったら、どう柔軟に対応したいか
など、「こうでなきゃ」ではなく「こうだったらいいな」を出していきます。
心理学の研究では、将来について具体的に語り合える夫婦ほど、関係の満足度が高い傾向があると報告されています。
未来の話をすることは、2人のつながりを深める時間にもなります。
③ 最後に、「仮のプラン」を一緒につくる
いきなり1つの正解を決める必要はありません。
- 第1案:30代前半で1人、状況を見て第2子を考える
- 第2案:まずは数年間キャリアに集中して、その後妊活をスタート
- 第3案:子どもを持たない可能性も含めて、柔軟に考え続ける
といった形で、いくつかの選択肢を持っておくことも大切です。
キャリア心理学では、「計画通りにいかないことも前提にしながら、偶然の出来事も味方につけて進んでいく考え方」が大事だとされています。
「1つの道だけに自分をしばらず、変化があったときに調整できる余白を残しておくこと」それが、これからの時代のキャリアとライフプランの作り方だと思います。
さいごに
子どもを迎える時期について考えるとき
私たちはつい
- 「今がラストチャンスなのでは」
- 「もっと貯金してからのほうがいいのでは」
と、自分を追い込むような考え方をしてしまいがちです。
でも本当に大切なのは完璧なタイミングを当てることではなく迷いや不安もふくめて、2人で話し合える関係を育てていくことだと、私は思っています。
作業療法士として、人生の転機を迎えた方たちと向き合ってきて感じるのは
- 情報を集めて
- 自分の気持ちを言葉にして
- 大事な人と一緒に考えた選択は
たとえ予定通りに進まなくても、その人の力になるということです。
・子どもを迎えるかどうか
・いつ迎えるか
・どんな形の家族をつくるか
最終的に選ぶのは、あなたとパートナーです。
この記事が、2人で未来の話をするときの、小さなヒントになればうれしいです。
参考文献
- 厚生労働省 人口動態統計年報 出生に関する統計(2023)
- 国立社会保障・人口問題研究所 第16回出生動向基本調査(2021)
- 日本産科婦人科学会 女性の加齢と妊孕性に関する見解(2023)
- Krumboltz, J. D. (2009). The Happenstance Learning Theory of Career Counseling. Journal of Career Assessment.


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